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(コラム)未病
体からのわずかなサインを見逃さない…
私は年間数試合程度、プロ野球観戦に出かけます。プロスポーツではサイン交換は今や当たり前のように行われており、味方同士のサインの見落としはミスや不利な状況に繋がるだけでなく、時には大きな事故にもつながります。
逆に相手のサインが読めれば、展開を大きく有利に導けることもあります。
私はさすがに野球観戦中に相手チームのサインを読もうと試みたことはありませんが、実は毎日のように患者からのサインを読み解こうとしております。
スポーツ競技のようなサインではありませんが、人間の体は様々なサインを一方的に出しております。多くは見逃してしまう程度のわずかなサインですが、患者を注視し、診察結果と問診内容から少しでもサインを多く引き出そうしております。
例えば、肩の痛みを訴え来た患者の場合、整形外科的診断で治療、処方するのが一般的だと思います。しかし、東洋医学的観点でこの症状を捉えると単に肩コリと判断するのではなく、将来起こりうる、まだ表面に現れていない別の疾患のサインではないかと疑うのです。
痛みがひどければ、一時的に外科的処置を施しますが、患者の体質や生活習慣なども鑑みて更に深く洞察しようと試みるのです。
野球の相手チームのサインは読まれないように変更されますが、人間の出すサインは似ているものが多いため、東洋医学の長い歴史の中で研究され、体系化されており、ある程度読み解き、推測ことが可能なのです。
そこがスポーツとは大きく違うところで、長い経験の積み重ねとその継承に基づいているものなのです。
気づいてもすぐ忘れてしまうくらいの軽い症状、すぐ病気といえるような症状ではないものの、その後大きな病気に繋がることもある前兆のようなサインが出ている状態…
東洋医学では、それらの症状を「未病」と言い病気の一歩手前のことを指します。
残念なことに私の病院に来る段階では、何かしらの症状が出ていることがほとんどです。やむを得ないことなのですが、そういう症状が出ていたなら、もう少し早く来院してもらえたら…と思うことは珍しくはありません。
「医者に行くほどではないと思うけど、なんとなく具合が悪い」
「最近疲れやすく、同じ時間に寝ているのに朝からだるい」
「気力がわいてこない」「イライラしやすい」
「顔がむくむ」「立ち眩みが多くなった」
などなど…
未病のサインは実に数多く人それぞれです。
東洋医学では未病の段階で漢方や鍼灸を中心に体質改善を促し、病気になる前に病気の芽を摘み取り、予防をする「未病先防」、病気になる前の段階で治療する「未病治」という概念がベースにあります。様々な患者のサインに対して、患者の体質を診断、鑑み、そしてその対処方法が東洋医学的に体系化されております。
現代の日本人にはなかなか馴染みのない考え方ですが、
「こんなことで医者に相談するのは恥ずかしいな…」と言わず、
「以前と何か違う…」と感じたらすぐに東洋医学を提供しているお近くの医療機関や当クリニックにご相談ください。
本日のテーマ「体からのわずかなサインを見逃さない…」
ご自分で判断せず、どんな些細なサインでも、気づいたらすぐに遠慮なくお伝えください。
まずはそこからはじめましょう。
私達もサインを見抜けるよう眼力を養ってお待ちしております。